「俺、サーカスでナイフ投げしてんだ!とりあえず、今日は遅いし、うちに泊まれよ!」
「あ、カイが出てたサーカス、さっき見てたよ。お世話になってごめん」
こんな優しい人に会えて良かった。私、案外強運の持ち主かも。
私は、カイと一緒に喫茶店を出て、サーカスの中へと案内される。
………さっきは、ここをルークと出たんだよね。ほんの数時間だと思う。なのに、隣にルークはいない。
「…………………」
暗くなる私の手を、カイは握ってくれた。
「俺もさ、サーカスの団長に拾ってもらったんだ」
「え………?」
「両親には、生まれてすぐ捨てられてさ………」
カイは私に自分の生い立ちをぽつりぽつりと話し出す。私は、それに静かに耳を傾けた。
「これ、気持ち悪いだろ」
「これっ…………」
カイは、ズボンの裾を少しめくり、私に右足を見せた。それは、鋼で作られた銀の足だった。
「生まれた時から、右足が無かったらしい。それを気味悪がった両親は、俺をすぐに見世物小屋に売り飛ばしたんだよ」
見世物小屋………私は、それがどういうものなのかわからない。だけど、それが良いところとは到底思えなかった。


