山並さんをきちんと待とう。
帰ってきたら、気持ちを伝えよう。
どんな結果だとしても、それ以外の方法を考えることができなかった。
山並さんの登山隊は順調に高度を上げて、C4(キャンプ・フォー)に到達していた。
ここから登頂までは1日。天候を見てアタックをかける。
『無事にC4到達です。あとは登頂あるのみです! 登頂アタックは明後日の予定です』
短いコメントに添えられた写真は、見上げる角度がどの山よりも急峻なマッキンリーと、凍てつくような雪。
山並さんの吐息もすぐに凍りついてしまうのだろう。かじかむ手でカメラを握る背中が見えるようだった。
「ああっ優子さん!! 」
大きな声にそちらを見ると、ミオちゃんがびっくりした顔で駆け寄ってきた。テーブルの上で傾いていた花瓶をはっしとつかむと、ほっとしてにこりと笑った。



