雨上がりの虹のむこうに



 とても優しい顔をした隼人さんは、茶目っ気を出して手を広げてみせる。


「優ちゃんは、あのウエディング施設の筆頭株主であの建物を買い取れるだけの資産は十分あるんだよ」


「そんなこと言われても……わからない。自分の知らない所でいくらお金が動いていたとしても、それが私のだなんて言えないわ」


「あの施設で利益を出しているのは、優ちゃんや皆の頑張りのお陰だよ。じいちゃんはきっかけを与えただけで、それを頑張って実らせたのは優ちゃんなんだよ」


 その言葉は優しく心に染み込んでくる。


「株主総会の資料だってあるよ。どれだけ優ちゃんが頑張ってきたかなんて僕が一番知ってる」


「……だって私には、他に何にもなかったの」


 とっさに隼人さんが、手を伸ばそうとして触れる直前に思い止まる。


「ずっと……そばにいたつもりなんだけどな。優ちゃんの心の中までは入っていけなかったよ」