「……ごめんなさい」
悲しそうに目を細めても、唇はちょっと笑ってくれた。
「そんな気がしてた。山並さんに会ってからの優ちゃんは、なんだか楽しそうで自分ばかりが焦ってたんだよ」
おかしいよね、そう言って私の手のひらに頬ずりしてから、そっとテーブルへと返してくれる。
「今日は優ちゃんに2つの物を用意していたんだよ。ひとつはダメになったけど、もうひとつは貰って欲しいんだ。僕から自由になれる物だよ」
隼人さんが取り出したのは、元大使館の権利書だった。それから会社の役員としての書類とそれに伴う利益が計上された書類だった。よく見てみれば会社の株券もある。
「優ちゃんはじいちゃんに、あの建物が欲しいって言ったよね。いつか自分で買い取るから誰にも売らないでって。なんでも叶えてあげるって言ったのに、聞き入れてくれないってじいちゃんは不満だったみたいだよ。
それでこっそり優ちゃんを役員にして、利益を分配していたんだよ。この株券はそれで買い取った物だし、優ちゃんの持っている株が、会社全体の7割になってる」



