雨上がりの虹のむこうに



 カップをソーサーに戻しながら、わずかに考える。


「隼人さんは社会的な地位もあるし、とても勉強熱心ね。いつでも新しい知識を吸収しているし、発想も柔軟だわ。会話していても、知性を感じるし、容姿だってとっても素敵。このオーベルジュだって個室でなかったら、隣の女性の視線が痛かったわ」


 茶化すような私の台詞に、思いのほか真剣な眼差しで笑みを作る。


「それは期待してもいいってこと? 」


 カップに添えていた手を、隼人さんの手が包み込む。


「もうずっとお預けされてて、僕も本気出さなくちゃいけないよね」


 愛おしそうに私の手に頬をすり寄せて、キスを落とす。


「優子、僕と結婚を前提に付き合ってもらえないか」

「………えっ」

「もうずっと前からそう思っていたんだよ。優子は仕事熱心だから、もう少しだけ待ってあげようとしたんだけど、もう僕がダメ。もう待てないよ……ずっと優子と一緒に居たい」