「きっと撮ってくださいね。毎日、見ます」
気になっていても、ずっと一緒には居られない。だから、もっと知りたい。
知りたいという欲求の向こうには、何があるのだろう。
「品川さんのために撮ります。だから、見てください」
不器用な笑顔を作ったこの人を、抱きしめたい、そう強く思った。
とても可愛い人だ。
いい大人なのに、体格だって大きくてがっしりしているのに、可愛いと思わせるなんて不思議な人だ。
やがて搭乗する飛行機のアナウンスが入ったので、山並さんは顔を引き締めた。
「行ってきます」
「行ってらっしゃい。お気をつけて」
頬がほんの少し強張ったけれど、きちんと笑えた。
山並さんが、もし思い出すとするなら、最後に見た私が、泣いていたらいけない。接客のプロ根性を出して笑ってみせた。
つられるように、山並さんの顔にもほんのりとした笑みが浮かんだ。
私は、山並さんにこんな顔をさせたことを、きっと忘れない。
山並さんはゆっくりと私から遠ざかる。その先には、ザイルを預ける親友がいて、高くそびえるマッキンリーがある。



