雨上がりの虹のむこうに


「品川さん撮り終わりです。移動しましょう」

「……は、はい」

 慌ててインカムで移動することを告げる。次は式場で、山並さんは移動しながら撮影することになっているので、固定されたカメラとは別のカメラを手に取っていた。

「品川さん、いつもと同じで大丈夫ですから」

 山並さんのことを考えて集中出来ない私に、ぎこちない眼差しを向けてくれる。

 頑張ってゆるめた頬だとわかっても、その目がとても優しくて、黒く深く輝いて見える。
 
 このままでは、新郎新婦のお二人に申し訳ない……一生に一度の大切なお式を台無しにしてしまわないように、気持ちを切り替える。
 
 ぱちんと手のひらで頬を挟んで気合いを入れる。


「もう大丈夫です。行きましょう」




 山並さんは式の間も、披露宴でもカメラを下げることなくずっと構えていた。

 山並さんが言っていた一瞬のために費やす時間と、記録のため思い出のために費やす時間は、きっと違うものだけれど同じように静かな情熱を感じた。