雨上がりの虹のむこうに


「山並さんに、アルバムのことを話したかっただけなのに……山並さんは人生の全てをかけて行ってしまうんですね」

 不器用そうな顔が崩れる。

「ずっと山に登ってきました。夏の山も、冬の山も。撮りたいと思った風景をカメラにおさめるためには、同じ場所に何度も通うんです。冬の富士山や、朝日のさす雲海や、夕暮れに染まる山も全て何年もかけてカメラに焼き付けているんです。

 雲海を撮るために、何時間も前からその場所で待っているんです。雲間から光が差すその一瞬のためだけに、何日も何年もかけて」


 このことは、突然降ってわいた話だとしても、山並さんからしたらごく自然で当たり前な成り行きだったのだろう。

 いつかが、今になっただけ。