雨上がりの虹のむこうに



 傘寿のお客様へ提案したアルバムの見本を見せると、とても喜んでいただいて出席していた家族分の注文を頂いた。

 このアルバム制作をウエディングでもしてみようという話になって、山並さんを探していた。これから挙式のお客様に提案していくために、どれくらいの枚数を納められるのか確認したかった。

 山並さんはじっと座っているよりも、あちこちを見て回っている人なので来ているのはわかっていても、どこにいるのかはわからなかった。

 傘寿の方のアルバムも家で作業してきていて、こちらで作業しているのを見たことがなかった。

 建物の中から、庭へ出てバラのアーチやバードバスの陰を見ていくと、バラのつるで覆われた東屋から話し声がした。

「話が急すぎる。話があった時点で、こっちにも話を振ってもいいだろう」

 いつも冷静な山並さんの怒りを含んだ声音に、目の前に出ていきづらくなる。出ていったとしても、電話中なのだから何か出来る訳ではないし、盗み聞きのようで気まずくなってしまいそうだった。

 それでも立ち去りがたく、電話が終わらないかうかがっていると、思いのほかはっきりとした声で山並さんが言い切った。

「出発は二週間後なら、ギリギリ準備ができる。お前のほうこそきちんと準備しておけ」