ふいに廊下が騒がしくなったかと思ったら、この部屋のドアが開かれた。開け放たれた先には、小柄でふわふわの髪を背中のなかばまで伸ばした女性が立っていた。
まったくのプライベートルームに見知らぬ女性がいることで、彼女の顔を見つめてぽかんとしてしまった。
状況が飲み込めないままに、一瞬対応が遅れたことで、彼女は山並さんのところまで到着して腕を引っ張った。
「鉄くんどうして」
「……ユキちゃん」
言葉を濁した山並さんには、彼女と話すだけの理由があるようだった。
名前で呼びあうくらい仲のいい人がいたなんて……
ズキズキと胸が痛かった。山並さんに彼女がいたとしても、ちっともおかしくなんてないのに。
どうしてかとても苦しかった。
不器用でいて、さりげなく気遣いのできる山並さんなら、大切な人ができたなら、とても大事に守るのだろう。
「何か話があるようなら、ここを使ってください」
席を立ちながら、山並さんに言ってみる。



