用意されていたのは、シンプルなサンドイッチだった。スライスされた食パンにレタスとお肉らしきものがサンドされている。
ひとくち食べて涙が出た。
「……これ、お父さんの味がします」
普段なら、パンは取り引き先の藤ベーカリーに届けてもらう。でも、このパンは、お父さんが焼いた味がする……
本当にごくごくまれにであるけれども、塩パンが好きな私のために、発酵バターを入れたパンを焼いてくれることがある。
はさんである具は、お父さんの作ったローストビーフだ。私がお父さんの味を間違う訳がない。
「そうヨ。ユウコに食べさせたかったノ。このパンは、ユウコが食べるべきヨ」
もうどんなに願ったとしても、お父さんにご飯を作ってもらうことはできない。お父さんが最後に作ったものを、私に食べさせてくれたことに奥様の愛を感じる。
「……ありがとうございます」
「たくさん食べて。ユウコが食べてると安心スル」
みんなで私を心配して何か口に入れようとしてくるので、おかしかった。



