雨上がりの虹のむこうに

 なにも返せずにいると、曲げた人差し指で目の下を拭うまねをする。

「可哀想にショックすぎて泣くことも出来ないんだね。心配しないでいいよ。僕がそばにいるから」


 それから付き添ってくれていた先生にお礼を言って帰ってもらったのも隼人さんだった。

 生徒のとんでもない状況に付き合うことになってしまって戸惑っていた先生も、私を託すことのできる人物が来たことでほっとしていた。 

 隼人さんは私を抱きしめながら、自分の執事である丸山さんにあれこれ指示を出すと、私を抱きしめたまま椅子に座った。


「こんな時なのに、ゆうちゃんが僕の腕の中にいるから嬉しい。最近のゆうちゃんは冷たかったんだもの」


 優しく髪をすいて、聞こえる声は耳のすぐそばだったのに、ちっともドキドキしない。


「私も世間一般の常識くらいわかるもの。隼人さんはモテるでしょう? いつもバレンタインや誕生日は逃げ回っていたじゃない」

「うん。僕はゆうちゃんが好きだから、他の女の子には興味がないんだよ。ホントだよ、ゆうちゃんのことはずっと好きなんだからね」


 抱きしめられたまま、頬ずりされる。隼人さんの頬は、すべすべしていて、頬ずりされても嫌ではなかった。