雨上がりの虹のむこうに

 ざわっと教室がざわめいた。仲のいい友達が心配そうにこっちを見ている。授業中だったから、にこっと笑って首を振った。

 心配ないよ

 それでも嫌な気持ちは無くならない。駆け落ちで結婚した両親は、親戚とは絶縁状態で、とっさに連絡できる人もいない。

 ふるえる指を動かして教科書を片付けて、カバンにしまう。教室まで来てくれた先生が、病院まで送ってくれて、付き添ってくれた。

 救急病院に指定されているそこは、大きくてひとりでいたら、凍えてしまいそうなほど冷たく感じた。


 だから冷たい部屋で、冷たくなった両親と対面した時、すぐには信じられなかった。

 明日、大使がパーティーをするので、珍しく二人で買い物に行くと言っていたのに。あたしに荷物持ちさせる気なのって怒りつつも、めったに出掛けたことのないお母さんが、嬉しそうだったのを覚えている。

 それなのに、どうして……

 ぼんやりしていたら、突然抱きしめられた。

「ゆうちゃん、辛かったね」

 とっさのことで、何の反応もできずにいると、涙目の隼人さんが私を抱きしめていた。

「僕のじーちゃんも後から来るから、何の心配もしなくていいよ。うちの親は、今国内にいないからじーちゃんで悪いんだけど、あの人最近ヒマだから心配しないで」