家族である私も一緒にここで暮らしていて、フランス大使の息子ミシェルとは年も近かったから、兄弟のように育った。


 そのミシェルと、この建物の所有者のお孫さんである隼人さんも仲がよくて、よく三人で遊んでいた。


 小さい頃の私は、生まれの違いや経済状態のことなど何も知らなくて、私達は普通の幼なじみだと思っていた。


 初めて気がついたのは、幼稚園にあがる隼人さんとミシェルが自分とは違う所に通うことになったからだった。


「どうして隼人もミシェルも、ゆうと一緒のとこに来ないの? 」

 困ったように眉を寄せた母の顔を、よく覚えている。


「ゆうちゃんは、いつまでも隼人くんやミシェルとはいられないのよ」

「なんで? ゆうがおねえちゃんだから? それとも女の子だからダメなの? 」


「ゆうちゃんは悪くないの。でもそういうものなの」


 家柄の違いなど理解していない子供に対して、言えることなんて限られているだろう。