「そんなこと言わないでよ。優子にふさわしい男になりたくて頑張ってきたのに、僕はまだまだってこと? 」

 伸ばした手が私の手を包みこむ。

「そんなこと言ってません。隼人さんは十分に成功しているし、生まれ持った品もあるわ。どうして私に構うのかわからないだけ」

「好きだからじゃいけないの? 」

 熱っぽい潤んだ瞳で見つめられる。

「ご自分の立場をわきまえて頂きたいの。好きでどうにかなることじゃないでしょう? お付き合いするのにも、家柄の釣り合うお嬢さんでないと」


 実際、彼にはあらゆる家柄のお嬢さまからお見合いの釣書が届くと聞いている。


「ほんと優ちゃんはつれないね……」


 隼人さんは持ちあげた私の手を、自分の頬に
あてて頬ずりする。ちゅつちゅつとキスを落として指の間に舌を這わすので、背中がむず痒くなる。


「まだお預けでも、いつか僕を選んで」


 ため息のような言葉とともに、車が到着したことが告げられる。