「高木、優子は僕のお客様だ」

「失礼しました。つい嬉しくなってしまいまして喋りすぎました。ご予約されたレストランまでご案内します」


 ちらりとバックミラーに笑いかけて、高木さんは車を出した。私も笑い返す。


「優子、二人で会っている時は僕だけを見てよ」

 バックミラー越しに高木さんとやり取りしたのが気に食わないらしい。

「そんなに見てませんよ? 」

「それでも、だよ。優ちゃんは美人なんだから見つめたら勘違いする奴だっているはずだよ」


 ため息しか出ない。


「私が今までどれだけのセレブリティを見てきたと思っているの。隼人さんの回りにはいつも美しい人がいっぱいいたじゃない。そんな人達と比べるだけ無駄だわ」

 隼人さんは、にっこりと綺麗な笑みを浮かべる。


「そんな上辺だけの美人よりも、優ちゃんのほうがずっと綺麗だし好きだよ」

「そんなことを言うのは隼人さんだけよ。私と歩いてたって、秘書と社長でしかないでしょう