ソレを見て悲しくて仕方なかったのは、そのお城に住む心優しいお姫様でした。

お姫様は、王様のいじわるをやめさせるために

「皆が悲しんでいます。お願いですから、もういじわるはやめてください。」

と、お願いしました。ところが、王様はカンカンに怒ってしまい、

「いじわるをやめてやるものか!そんな事を言うお前も、いじめてやる!」

と言うと、お姫様をお城から追い出してしまいました。

さらに、王様は村に一枚の紙を配るように、召使いたちに言いつけました。


『いじわるをやめさせようとしたお姫様に優しくしてはならぬ。優しくした人も罰を与えてやろう。』


村の人たちは、心優しいお姫様が大好きでしたが、王様のいじわるが怖くて怖くて、仕方なくお姫様を知らんぷりをするしかありませんでした。

お姫様は、悲しくて悲しくて森の中で涙をポロポロと流しました。

その時です。
何やら楽しげな歌が聞こえてきて、やがて段々と近づいてきました。やってきたのは、その森に住む、緑の帽子をかぶった、陽気な木こりでした。木こりは、お姫様を見ると

「やぁ。お姫様。こんな所にいたら風邪を引いちゃうよ?なぜ泣いているんだい?」

と優しく声をかけてくれました。お姫様は、王様に意地悪されたこと、村人たちも、王様が怖くて自分を無視をしていることを話しました。

「へぇ!いじわるを楽しむなんて、ソイツはおかしな話だ!」

するとどうでしょう。木こりは、大きな声で笑い出しました。驚いたお姫様に、木こりはさらに言いました。

「それなら、王様にわからせてやろうよ!いじわるが、どれだけ悲しいかってね!」

そういうと木こりは、お姫様を家の中で泊まらせてあげると、たくさんの紙を用意して、

『いじわるを知らんぷりするのは、いじわるな王様と同じことをしているんだ!あんな王様と一緒になりたくなかったら、すぐにお姫様を知らんぷりするのはやめて、王様を懲らしめるために村から出て行ってやろう!』

という手紙を封筒の中にいれました。全ての紙に書き終えた木こりは、夜中に村のポストにその紙をポトリ、ポトリ一つずつ落として行きました。