「.......なに。」
校庭の隅。
体育館の裏口のベンチに彼はいた。
じゃりっと石ころが音を立てる。
本を読んでいた彼を上から見つめて数十秒、
彼は案の定不機嫌そうに私を睨みつけるようにして顔をあげた。
「.........ぃえ。」
なんにもないです。
私はそう口にしたかった
できれば、本当に好きで本当の告白なら、きもちの整理として、ここは一旦撤収として帰りたいのに。
「...なんもないなら、どこか言って、邪魔。」
別に邪魔なわけではないのに....本を読んでいるのに支障はないのに
なんて、今考えても無駄なことを永遠と頭にループさせる。
「1人にしないでください」
「.....は?」
もう、耐えられないけど
やっていくしかないんだ。
この仲間ごっこを。
できるなら、本当に彼に恋をして告白してみたかった。
変なドキドキが私を襲う。
照りつける太陽が私の体温を余計上昇させて、汗を誘う。
「.....好きです。お願いだから付き合ってください」
ぎゅっと長いスカートのひだを握れば、じわりと手汗が滲んだ。
彼に向けるまっすぎな瞳に、なぜかうっすら膜が張って
あまりにも綺麗な彼の顔に息を飲む。
「......お願い?」
彼の口から、言葉が発した途端、
次々と涙が私の目に溢れ出た。
「...っねがい....おねがいしますっ」
彼のかっこよさに私はすがっている。


