「お久しぶりだねぇい…」
完璧に嵌められた。あの悪意の塊のような「魔王」の言うことを信じるべきではなかった。そもそも、あいつが何か気を利かせた時点で警戒レベルをMAXまで引き上げるべきであったんだ…
「…」
沈黙に全ての感情を委ねるものの、目の前に居る殺人中毒者「源内 尖」は意にも介さず笑顔を崩さない。開いてるか分からない切れ長の細い目はへの字に形作られていて、柔らかな印象を受ける。しかし、この人の恐ろしさは僕が身をもって知っている。
「お久しぶりです…源内さん。このところお忙しかったようで。」
「ん〜そうでもなかったんだけどね。いや〜轟々野はすごいねぇ。一言言うだけで楠野君に合わせてくれるんだもん。」
轟々野 雷太。二つ名は「魔王」。齢僅か16にしておどろおどろしい二つ名を手に入れた青年。「不可能な事など、俺っちを殺す事以外ないんじゃね?」が決め台詞な天真爛漫、傲岸不遜な野郎。しかしあの野郎にも苦手なものはあり、それが源内さんであるのだ。
「どうだい。学校のほうはぁ?」
「…これ僕なりの疑問なんですけど、何で久遠寺さんといい源内さんといい大人の方々は何かと学校の様子を聞きたがるんですか?いくら聞かれても僕にとっては荒唐無稽な物事を押し付ける組織としかいい様がないですよ。」