卯月の恋

「礼央、今どこに住んでるの?」


「俺?この近くのマンション。会社すぐそこだから」


「いいな。海の近く」


「…隣の部屋、空いてるよ」


「本当?引っ越しちゃおうかな」



「てか、一緒に住む?」



え?

顔をあげると、礼央は照れ臭そうにぷい、と横を向いた。


「…南向きだから、ベランダで野菜育てられるし。キリコも喜ぶと思う」



「礼央?」



「…なに?」



「あのね、好き」



礼央は赤い顔をして、おかしそうに笑った。


私はその顔を見ながら、もう一度泣いた。


礼央といると私は泣いてばかりだ。
悲しいからじゃなく、寂しいからでもなく、愛しくて。




私と礼央は手を繋いで歩き出す。



まだまだ知らないことがたくさんある。

ゆっくりゆっくり、歩きながら、知っていこう。


人はたまに嘘をつく。
人を傷付けたり傷付けられたりもするけれど。


きっと、楽しい明日が来るよ、と水無月の風が教えてくれてる気がした。





end