大好きなんです【短編集】



それから後のことは、あんまり覚えてない。


というより、思い出したくないだけなのかもしれない。


でも、それから章太があの世へ旅立ってしまうまで、それほどの時間は無かった。


章太が死んだ。


そう分かった瞬間、今まで全く出なかった涙が次々と溢れでた。



「柚香ちゃん、本当にありがとう」



病院から帰るとき、章太の家族の人たちにそう言われた。



「私は、何も...」


「ううん。

柚香ちゃんのおかげで、章太はいつも笑顔だった。

柚香ちゃんがいたから、章太は章太らしくいられたのよ」



章太のお母さんが言ってくれたその言葉は、きっと一生忘れないと思う。