微かに香る翔くんの匂いがますますわたしを寂しくさせる
いつもなら翔くんが隣にいて、触りたくなったらいつでも触れる距離にいたのに、今はどんなに会いたくてもすぐには会いに行けないところまで行ってしまった
くまのぬいぐるみじゃやっぱり人肌の温もりには適わないよぉーとおいおい涙が目から溢れ出ていると、扉のほうからノックの音が聞こえてきた
いったいこの時間に誰だろうと、鼻を鳴らしながら、弱弱しく返事をすると、扉の向こう側には枕を抱えた寝間着姿のさっちゃんが立っていた
「…さっちゃん」
「あー、やっぱり美咲様泣いてます!絶対そうだと思って訪ねてみてよかったです」
そう言うと、扉をゆっくり閉めたさっちゃんはいそいそとわたしの隣に潜り込んできた
突然のさっちゃんの訪問に驚き一瞬にして涙が引っ込んでしまったが、隣からあたたかな温もりが感じられ、またすぐに涙がとめどなく溢れてきた
そんなわたしにさっちゃんは何も言わずにわたしを抱き寄せ、よしよしと頭を撫でてくれた
「もうすぐ初夏と言いましても夜はまだまだ肌寒いですからね。僭越ながら、ひばり様専属メイドのこの幸が、翔様が戻ってこられるまで美咲様と添い寝させていただきます」
耳元から聞こえてくるさっちゃんの優しい声に彼女の柔らかな胸に顔を埋めさせながら、何度も頷いた
「だから、ちっとも寒くなんかありませんよ」
翔くんが旅立ってしまったその日の夜、わたしはさっちゃんの優しい温もりの中で子供のように泣きじゃくりながらも、穏やかな気持ちで眠りにつくことが出来た

