その行為自体は大変可愛らしくて大いに喜ばしいことなのだが、本当に放してくれなさそうなので少々困っていた





そろそろ出発も近いし、美咲にはちゃんと納得してもらわなければなと、後ろから抱きついている美咲を自分の前に向かせようとしたとき






カツーーーン






何かが落ちる音がしたので反射的にそちらに注意を向けると、手からずり落ちた携帯のことなどには目もくれず、顔を真っ青にさせた輝がわなわなと震えていた







「…アメリカ…?先輩、アメリカに行くんですか?」





「まぁ、そうだが…」





「俺を置いて!?」







何故、お前がそのような反応をするんだ!!





今にも自分に抱きついてきそうな輝から急いで後退りすると、今度は未だに背中に抱きついている美咲のくぐもった泣き声らしきものが聞こえてきた







「ふえぇぇ…、嫌だよー。翔くんと離れたくないよーーーー!!生きていけないよーー!!」





「美咲、少し落ち着いて…」





「なんでもっと早く言ってくれなかったんですか!?」





「頼むから、お前は少し黙っていてくれ」







ぐずりだした美咲と迫りくる輝にあたふたし始める翔の耳に授業の終わりを告げるチャイムの音が聞こえてきた





そして廊下の向こう側から聞こえるガヤガヤとした賑やかな声で、これから起こるであろう騒動を想像するだけで頭が痛くなった翔であった