「ったぁ……。」

 そう呟いた奏雨に異変があった事を知り、陽樹が駆け寄ってきた。

「大丈夫か?」

「うん…。」

 ナイフは奏雨の右手を深く切り裂いて、酷く痛そうに見える。

 そして、ナイフはそのまま奏雨の右腕をも傷つけていた。

 陽樹はネクタイをとり、奏雨の右手をそれで縛った。

「ありがとう…。でも、大丈夫。こんなの、すぐに治るから。」

 奏雨がそう言うと、陽樹は不思議そうな顔をしたが、奈都は奏雨が何をするのか分かったようだ。

「お前…ここでやると危険だ。とりあえず空き教室へ入ろう。」