内心そう思いながら、「そうです。」と返事をすると、「ついて来てください。」と言って、彼はどんどん歩いて行ってしまった。

 だけど奏雨には、彼が誰なのかすぐに分かった。

「また後でね!」

「…おう。」

 幹部の皆とルイにそう言って、奏雨は彼の後をついて行った。

 まだ靴を履き替えていなかった奏雨は、急いでバッグから上靴を取り出し、彼の後をついて行った。

 そして、彼に話しかける。

「ねぇ、貴方、凰華の幹部で情報係の桜庭陽樹だよね?皆と喧嘩でもしたの?」

 そんな奏雨の鋭い観察力に、彼は驚いたようだった。

「それに、そんなカツラも、眼鏡も。全部カムフラージュなんでしょう?」