教室に戻ると、
心配そうに私を待っていた彩花ちゃん





「…えへへ…、渡せなかった…」


眉を下げて、切なく微笑むと
彩花ちゃんはなにも言わなかった



ただ、そっと抱きしめてくれた…




「…あ、彩花ちゃん…」





彼女の温もりに、
止まったはずの涙腺が緩む



堪えようとするのに、
ポタポタ、と溢れてくる



「…ふっ、ぅう…っ」


教室に響く、苦しい泣き声




「…千佳、がんばったね」



彩花ちゃんは、それだけ言うと
優しく背中をさすってくれた



その言葉が嬉しくて…

この温もりに安心して…




「…彩花ちゃん、聞いて…?」



私は、自分の気持ちを打ち明ける



「…苦しいけど、一之瀬くんが好きで…
 諦められないの…、っ

 でも、告白する勇気もなくて
 臆病なんだ、私…



 だから…

 だからね…

 好きでいようって思ったの


 一之瀬くんの恋を
 応援しようって思ったの…っ」



ゆっくり、震える声を抑えて
ポツリポツリと話す私の言葉を
最後まで聞いてくれていた彩花ちゃんは




「…千佳…っ」


話し終えると、私の体を
ぎゅっと抱きしめてくれた