イチコイ日誌~苺色の恋記録~

 
「あの余裕っぷりはどこ?」


「余裕なんて元々ないです……先輩が手強いから、強がるしかなくって……」


「猫騙しか。かわいいところもあるじゃない」


「やめてください。先輩のほうがかわいいです……」


「何気に反撃してくるよね、きみ」



 背中をさすってあげたら、ホッとしたんだろうか。


 苦しいくらいに腕を回してくるのは、歳相応の少年だ。



「私のファーストキス、高くつくのよね」


「初めてだったんだ……ふふ」


「そこ笑わない」


「ゴメンナサイ」


「とにかく、責任は取ってもらいます」


「僕、何をすればいいですか?」


「それは自分で考えて」


「え?」


「きみのやり方で、私の機嫌を直してみてよ」



 キョトンと首を傾げたきみは、すぐに笑うの。


 答えがわかっているから。





「先輩、僕と連弾してくれませんか?」





 突然の恋。



〝好き〟の代わりに、差し出された手を取ろう。


 言葉じゃ交わせない気持ちを音色に乗せて。


 奏で始めた恋物語は、私たちの中で、大きくなってゆく。



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だれと…【後輩】

いつ …【放課後】

どこで…【音楽室】

なにを…【ひとめぼれ】