「淡い桃色」

ガヤガヤ…
「あっいたいた、雛!」
後ろから私の名を呼ぶのは、幼なじみで一番仲良しの横山花奈。花奈はロングのストレートでサラサラの髪をしている、身長は割と高く大人びていてそして美人だ。
「花奈!どこにいるのかめちゃめちゃ探したよー」
半べそをかいてそう話すのは私、若草雛乃。ミディアムで緩い巻き髪をしていて、身長は割と低く身長のせいもあるのか周りからは可愛いって言われるが普通の平凡な女の子だ。
私達はまだ十五歳、これからキラキラとした高校生活が始まるのを心躍らせながら待っているのである。
ガラガラ…教室のドアが開き、担任の先生が入ってくる。
「席につけー!」
担任の声で皆席につく、私の席は…窓際の一番後ろの席だ。
「雛!私雛の前の席だよ、良かった席離れちゃうかと思って心配したよ」
花奈はどうやら私の前の席らしい、親友が目の前の席でホッとした。
「えー今日からこのクラスの担任をする……これから高校生活……」
担任の話など長くてつまらない、おまけに頭に入ってこない。そんな事を思いながらぼんやりと窓の外を眺める。

「ねぇね、あんた部活とかどうするの?するの?」
花奈は上半身をひねって私の方へと顔をやり、そう話しかけてくる。
「そうだ、私そのこと何も考えてなかった。花菜はどうするの?」
「私も何も考えてないんだよねー、高校だしどうせならマネージャーとかしてみたいなって思ってるけど、雛一緒にマネージャーとかしてみない?」
「マネージャーか…そういうのもあるんだよね、良いかも。やってみよっか」
「それじゃ決まりね!午後部活見学行こう!」
そう花菜と約束をしたところで、チャイムがなりホームルームが終わった。

キーンコーンカーンコーン…
「それじゃ、さようなら」
先生の挨拶とともに帰りのホームルームが終わる。
「雛!行こう」
「うん!あっ、待って花菜!」
花菜は私に声をかけると嬉しそうに早々と教室を出ていく、私もそれに追いつこうと後を追って教室を出た。
「まずは、野球?」
花菜の言葉で野球部の部活を見学しに行く、しかし野球のマネージャーは思っていたのと少し違い野球部のマネージャーはパスした。
「少し想像してたのと違ったねー」
「うん、そうだね。次はどうする?」
「サッカー部にでも行ってみようか、きっとあいつらもいるかも!」
「そうだね、そうしよっか」
そう話すとサッカー部へと足を運んだ。
「雛!花菜!」
サッカー部へと行くと案の定あいつらはいた。
「何、サッカー部のマネージャーするの?」
そう話しかけてくるのは、浅倉颯斗この人も幼なじみである。
「えーお前らがマネージャーとかやってけねーだろ」
そう笑って憎まれ口を叩いているのは、永井浩太でこの人も幼なじみである。
私と花菜と颯斗と浩太は、四人とも近所同士で仲の良い幼なじみなのだ。
「うるさい!あっわかった、サッカー部のマネージャーになって欲しいからそう言ってるんでしょう?」
「そんな訳ないだろう?誰がお前なんかに入って欲しいなんて思うかよ、バーカ!」
私と浩太のいつものやりとりがまた始まった。
仲の良い私達は、なんだかんだ結局部活も同じになった。

【マネージャーと部員が恋に落ちる】よくそんな話を聞くけど、私には絶対にそんな日は来ないだろうと思っている。何故なら…

ピンポーン…ガチャ…
朝私は、浩太の家のインターホンを押す。ドアが開き、中へと入る。
「おはようございます!」
「おはよう雛ちゃん、いつもいつもごめんね。うちの浩太が本当にもう、まだ寝てるのよ。私は仕事でもお家出なくちゃいけないから、申し訳ないけど宜しくね」
そう言いながらバタバタと家の中を走り回る浩太の母。私は靴を揃えて中へと入っていく。
「はい、大丈夫ですよもお慣れっこなので。今日も仕事頑張って下さい!」
「ありがとう!それじゃ、行ってきますね」
そう言って、浩太の母は私とすれ違い玄関のドアを勢い良く開けて出て行った。

「よし、今日も気合い入れて起こすぞ!」
そう私が思った理由の一つは、浩太の朝の面倒をこうして小学生の頃からずっとみているからである。
ドンドンドン…ガチャ…
勢いよく階段を登りきり一番奥の浩太の部屋を開けると、ベットに向かって私はダイブする。
「ぐっいっ……てぇ……」
「おはよう、起きてよ朝だよ!」
ここまでしないと起きないなんて、どんだけなの?って最初は不思議に思っていたが日課になっている今は、いつになったら自分で起きられるようになるんだろう?と心配をするようになった。
「もお少し…少しだけ…後5分寝かして…」
うなだれながら掛け布団を頭までかぶり直す浩太。
「ダメに決まってるでしょう。ダメダメっ起きないと遅刻するよ!」
頭まで覆い被さった掛け布団を、いつものように剥ぎ取る。
「わかった、わかったよ。起きるよ」
ポリポリと頭を掻きながら、面倒くさそうに体を起こしベットから出る浩太。
ベットから出たのを見届けた私は、浩太の支度が終わるまでコーヒーを飲みながら居間でテレビを見るのである。
「おーい、そろそろ行こうぜ」
浩太の支度が終わった合図を聞き、二人は家を出た。
周りから見たらきっと、この二人は恋人のように見えるのかもしれないが、幼なじみからしたらこんな事さえも普通なのだ。

おはよう…おはよう…
校舎へ入ると飛び交う挨拶、玄関の下駄箱で上履きに履き替えた瞬間背中に重い衝撃が走った。
「おはよう、雛!」
元気よく私の背中に飛び乗って挨拶をしてきたのは、花奈だ。