「俺としてくれるのか?」


「うん」


あたしは頷いた。


「あんたのひどい手紙を読むのは毎回大変だけど」


椿龍は笑った。あたしも笑った。


「手紙には、いくらでも自分の言葉で、自分の意思で書けるでしょ。あたしが全部聞いてあげる。だから、自分らしくしなよ。ありのままの椿龍をあたしに見せて。そうしたらあたしも......」


「ありのままか」


「そうだよ」


雨はいつの間にか上がり、青空が顔を出していた。


「またな」


椿龍はそう言い、あたしに手を振った。


あたしは小声で言った。


「またね」


あたしは、青空の下で夏の到来を感じ、一人の武士に束の間の別れを告げた。


「あたしもあんたの事知りたい。もっともっと」


青空には雲が流れていた。