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飛竜から下り、花音は久し振りに風の国の地を踏んでいた。


「・・・・・・」

「何だ。思ってたより、普通だな」


辺りの街の様子を見ながら歩いていた花音は、聞こえてきた刹那の声に足を止めた。


「・・・おかしいよ」

「花音?」

「だって、だって・・・」


呟きながら、風の国を脱出した時のことを思い出す。

確かにあの時、陰へのまれていく国を見たのだ。なのに、今はそれ以前の平和だった時と変わらない街の様子があった。

それはいいことの筈なのに、あまりいい気がしない。

風夜もそれは同じらしく、難しい顔をしていた。

「とにかく、もう少し街の様子を見てみましょう」

「あ、君達」


星夢が言って歩きだそうとした時、一人の男性が声を掛けてきた。


「何ですか?」

「北の方へは行かない方がいいよ。向こうは危険だからな」


そう言って、男性は立ち去っていく。


「北へは行かない方がいい・・・ねぇ。どうする?」

「行ってみよう」

「そうだな」

「まぁ、そう言うと思ったけどな」


星夢の問い掛けに答えた花音と風夜に、刹那は肩を竦めた。