「・・・いいわ。今日の所は、引き上げてあげる。数日後にある大切な用事の準備も、まだ終わってないことだしね」


その言葉を最後に窮姫は姿を消した。

それを見て、ほっと息をついた花音に神蘭が声を掛けてくる。


「さぁ、戻るぞ。他の奴等も、目が覚めた時にいなかったら、心配する」

「そうだね」


そう返し、神蘭達と歩きだそうとして、花音は風夜が動こうとしないのに気が付いた。


「風夜?どうしたの?」


立ち尽くしたままの風夜に声を掛けると、その声で我に返ったように花音を見た。


「・・・いや、何でもない・・・」


そう答えた風夜だったが、拳は何かを堪えるように、固く握り締められていた。