元の世界へと戻ってきて数日。

久し振りの学校にも慣れてきたある日、花音は暗い道を一人で歩いていた。


(わからない所を色々聞いてたら、こんな時間になっちゃった。急いで帰らないと)


近くにある時計が、もうすぐ八時になろうとしているのを見て、足を速めようとして、花音は足を止めた。


「!?」


目の前に黒いものが蠢いている。


「あれって、まさか・・・」

「ふふ、見付けましたよ」

「!!」


聞こえてきた声に振り返ると、聖が笑っていた。


「聖・・・ちゃん・・・!?」

「お一人ですか?・・・ああ、脱出出来たのは、貴女だけでしたね。・・・ですが、残念でした。この世界に来たところで、私達から逃れられはしないんですよ」


クスリと笑う聖に、花音は少し後ずさる。


「・・・風夜達は?・・・皆は、どうなったの?」

「さぁ・・・、私の知るところではありませんね。それに、今は人の心配をしてる場合ではないですよ」


そう言った聖が放ってきた陰を消そうと力を使おうとして、それより早く身体の自由を奪われてしまう。


「っ・・・」

「ふふ、此処には風夜様達も、貴女の弟もいない。・・・誰も助けにはこない」


言いながら、近付いてくる聖の手に、細身の剣が現れる。


「これで終わりです」


身動きのとれない花音に、聖が剣を向ける。

その時、急激に周囲の温度が下がったように感じた。