「な、何、あれ?」


花音の前に立って、結界を維持している風夜の向こうに紅い巨大な竜が見える。

結界にぶつかる炎は、その竜の口から吐き出されているようだった。


「あれは火竜だな」

「火竜?」


紫影の声に彼を見る。


「文字通りというか見た目通り、火を吐く竜だ。見た目とは違い、普段は大人しくて、住みかである火山から出ることはないはずだ」

「大人しいなら、どうして・・・」

「そこまでは。ただそれはあくまでも怒らせなければの話だ。一度怒らせれば、口から吐き出す数千度の炎で、全てを焼き尽くすともいわれてる。間違っても、真っ向勝負する相手ではないな」

「数千度・・・」


思わず、その言葉に息をのむ。

だが、数千度というわりには結界の中は、そんなに暑くは感じなくて、風夜を見た。