「さてと、この辺りで大丈夫かな。・・・じゃあ、私は向こうを手伝ってくるね」


そう言い、未央が来た道を戻っていく。それを見ながら、花音はその場に座り込んだ。


「ちょ、花音!?」

「どうして・・・、何で風夜が・・・私のこと・・・」

「ちょっと、しっかりしなさいよ」


飛鳥がそう声を掛けてきたが、花音はいつもどおりに振る舞うことは出来なかった。

火焔達が寝返ったことにはショックを受けても、まだ立ち直ることが出来た。

だが、風夜は絶対に自分の味方だと、危害を加えることはしないと信じていたからか、今の状況が受け入れられなかった。

その時、誰かが近づいて来る気配がした。


「!!・・・誰っ!?」


困ったような表情で花音を見ていた飛鳥が、はっとしたように振り返る。

その先には、いつの間にか一人の少年が立っていた。


「俺は、紫影。・・・陰の一族さ」

「!!」


その言葉に空気が張り詰める。


「そう警戒しないでくれ。俺はただ、あの風夜って奴の状態と、どうすればいいかを教えにきたんだ」

「陰の一族の者が、そんなことしていいの?」


警戒したまま、飛鳥が問い掛ける。


「俺は、今回みたいなやり方は嫌いなんだ。・・・それに、陰の一族全ての者が、他国を制圧しようとしているわけじゃないってことを、知ってほしい」


そう言った紫影の表情は真剣で、嘘をついているようには見えなかった。