「・・・花音か」


二人の所へ辿り着く前に気配で気付いたのか、空夜が振り返る。

その目は泣いたのか、少し赤い。


「まさか、こんなことになるとはな」


呟いて、傍で肩を震わせている風華を見る。


「・・・風華もずっとこんな調子だ」

「仕方ないよ」


空夜にそう返す。

花音ですら、まだ気持ちの整理が出来ていないのだから、血の繋がりがある二人が、ましてまだ幼い風華が王の死を受け入れるのには、時間が掛かるだろう。

そう思った時、後で二つの足音が止まったのに気付いて振り返る。

そこにいたのは、雷牙と風夜だった。


「風夜、雷牙くん、夜天くんは一緒じゃないの?」

「城に報告に行ってる。光の街の中でのこととはいえ、闇の国の中で起きたことでもあるからな」

「そっか」


花音と雷牙が話している間に、気まずげな表情で風夜が風華と空夜に近付く。


「あのさ、昨日は・・・」

「・・・謝る必要はない。昨日のことではっきりとした。・・・お前は王族に相応しくない。王族に魔族がいるというのは、認めない」

「っ・・・!」


ばっさりと切り捨てるように言われ、風夜は息を飲む。

それでも気を取り直して、今度は風華に声を掛ける。


「風華、あの・・・」

「嫌!来ないで!」


肩に触れようとした風夜の手を弾き、風華は空夜の後ろに隠れる。


「怖いよ、空兄様。私、まだ死にたくない・・・」

「・・・大丈夫だよ、風華」


怯えて震えている風華と彼女を宥めながら拒絶の目を向ける空夜に、限界とばかりに風夜は背を向けた。