バンッ


壁を叩く音が狭い室内に響く。


「くそっ、どいつもこいつにも逃げられ、宝珠まで奪われるなんて・・・」

「それもあの忌々しい闘神共のせいだ」

「随分、荒れてるわね」


二人の男が苛ついているのを見て、女が言う。


「だが、確かに奴等にはしてやられた。お陰で我等のプライドはズタズタだ」


それまで黙っていた男の言葉に、窮姫が急に笑い始めた。


「何?どうしたの?」

「いや、ちょっと面白そうなことを思い付いてね」


窮姫はそう言うと、妖しい笑みを浮かべた。


「・・・覚悟が決まるまで、前に現れるな・・・か」


窮姫達がいるのとは別室。一人でいた火焔は、風夜に言われたことを思い出していた。


(俺は、国を、民を選んで、あいつらを裏切った。・・・だが、完全にあいつらを捨てることも出来なかった)

「それが、あいつには中途半端な位置に見えたってことか」


そう火焔が呟いた時、扉が開いて、水蓮と大樹が顔を覗かせる。


「・・・何だ?」

「何があったか知らないけど、今すぐ兵を大広間に集めろって言われたんだ。火焔がいなかったから、火の国の兵士にもそうするよう伝えてしまったけど」

「ああ。それで、俺らにも来いってか?」

「そう。まあ、風夜達に逃げられ、宝珠まで持っていかれて苛ついていたみたいだから、何か仕掛けるつもりなのかもね」

「・・・」


水蓮のその言葉に、火焔は何も返さなかった。