わたしは郁に会いたい一心で右手からそのキーホルダーを落とした。


ガシャン



あの時と同じ音に、同じ頭痛。





そして──


わたしが昔いた教室。


わたしはまた中学時代に戻ったんだと悟った。





今は授業中。


教科は…社会。


禿げた先生に見覚えがある。




「なあおい、いきなり寝るなよ!俺がしゃべってんだろ?」


わたしが顔をあげてあたりの様子を伺ってると、郁がわたしの机を蹴った。


「痛っ!ごめんごめん。で、なんだっけ?」


「だーかーらー。お前が俺のメアドよこせっつったんだろ?このメモなくすなよ?無くしたらぶっ殺す」


「へいへい。」


「あと俺、携帯持ってないから返信は遅いからな、文句言うなよ」



そっか、郁は高校入るときに携帯買ったんだっけか。


中学のときは結構メールはマメだったのにな。


高校は全然返信くれなかった。




もしかしたらわたしはこの時が1番楽しかったのかもしれない。


付き合ってないけど郁のそばにいられたこの時が。