それから5分後。雨はやんだ。
なのにこの人は動かない。
もしかして…誰か待ってるのかな。
…まぁ、私には関係ないけどね!
私も早く帰りたい…けど、帰れない。
だってまだ雷、なってるもん!
『あーあ。せっかくの誕生日なのに
何もいいことなかった…』
ふと呟いた本音。
『寒っ…』
慌てて家を出てきたからマフラーを
忘れちゃった。風邪、ひかないように
気をつけなきゃ…すると、ふわっ、と
甘い香りがした。
「………………あげる」
首に巻かれたマフラー。巻いてくれたのは
さっきの男の人だった。
『え、そんな…申し訳ないです…!』
返そうとすると手を握られて
「……いい。」と言ってまた巻き直した。
『むぅ…』
少し子供扱いされたみたいでちょっとカチン、ときたけど素直に巻かれた。
『暖い…』
マフラーに顔を埋める。
すると男の人と目があって、男の人は小さく
微笑んだ。少しだけ、ほんの少しだけ…
ドキッ、とした。