~side 翔央~

いつか言わなければいけないこと。
まだ時間はあった。なのに、なぜ俺は
今、言ってしまったのだろう。
橋本を傷つけずにすんだかもしれないのに。

「大丈夫、私は大丈夫」

俺に向けられたその言葉はまるで自分に
言い聞かせてようだった。

『嘘だろ。』

「ほんとだよ?」

『じゃあなんで泣きそうな顔してるんだ』

「そんな、のっ…!」

何を言っても橋本は"してない"の一点張り。

「私は大丈夫だもん。」

『なんでそう思える?』

「中途半端な気持ちで貴方を好きになった
わけじゃないから」

…強くなったな。

『変わったな、あの頃より。なら、もう
俺はいらないか』

「意外と1人でもいけるかも」

やめろ、そんな顔で言うなよ。

「宮坂くんっ?」

先を歩く橋本を後ろから抱きしめる。

『1年…あと1年しか一緒にいられない。
それでも付き合って欲しい』

「…仕方ないなぁ。今回だけだよ?」

泣きながら笑った君を見て
離したくない、と思った。