~side 翔央~

「でしょ?私って意外と…いいとこ、
あるんだからっ…!」

泣いてる橋本を抱きしめずには
いられなかった。

『泣くな…って泣かせたのは俺か。』

そう言うと橋本は俺のせいだと言った。
それでもかまわない。君の心の中に
"俺"という存在がいたなら。

橋本の事諦めた、って言ったら嘘になる。
"誰も選べない"って言われた時は
ほんとに辛かった。でも、それが橋本の
優しさだと気づいた。それでもやっぱり
諦められなくて友達としてそばにいたくて。

『正直まだ好き。』

「私、そんなに想われてるんだね。
でも、…宮坂くんの気持ちには答えられない」

『分かってるって。ただ言いたかっただけだから。ごめんな』

それだけを告げて橋本から背を向ける。
頬を流れた一筋の涙。泣いたのは小学生以来。
そんな俺を泣かす橋本はすげぇよ。

「宮坂くん!私達はずっと友達だよ!」

俺の背中に向かって叫ばれた言葉。
返事の代わりに俺は手を振った。