「あの、今時間ある?」

『うん、大丈夫だけど…』

黒川くんが言いたいことはなんとなくわかる。
だから、私は黙って後についてく。

「あの日言ってたこと。今なら言える」

ゆっくり話し始めた黒川くん。

「俺達は生まれた頃から一緒だった。遊ぶのも学校に行くのも。やがて中学生になって2人でバスケ部に入ったんだ。でも、練習中にりんが怪我をしたんだ。もう一生バスケはできないって医者に言われて。怪我をしたのは俺のせいだから。だからりんのそばにずっといるって
約束したんだ。」

それが真実だった。

『いいの?黒川くんはそれでいいの?』

「りんが怪我をしたのは俺のせいだし。
ずっとそばにいるって決めたから」

『それならなんで悲しそうな顔してるの。
疲れたんでしょ。りんさんに縛られずに生きたいんでしょ』

「飛鳥さんにはわかんないよ」
今までで1番冷めた目。

目の前にいるのは黒川くんなのに
黒川くんじゃない気がした。

『わかんないよ。でも、今 黒川くんが
どうしたいかはわかる!』

わかるよ、だって黒川くんの心が
叫んでる。"楽になりたい"って。

「…疲れた。」

ほら、言えるでしょ?

『だったら、その思いりんさんに伝えて。
大丈夫、りんさんならわかってくれる。
だって、黒川くんの幼なじみだもん』

「ありがと、飛鳥さん」

私に向けられた笑顔。少しだけドキドキした。