悔やんでも悔やんでも、何も変えられない。
もう涙は出なくなった。

霊安室に陽司が運ばれたと聞いたとき、会いに行く勇気が持てなかった。
だけど、これが最後なんだ。
会っておかなければ後悔する。

霊安室に向かう通路。手摺りを掴み重い足でゆっくりと進んだ。

その時、偶然にも陽司のお母さんが霊安室に入っていくのを見てしまった。

その後を着いて入っていくことなんか出来ない。僕は病室へと戻らざるをえなかった。

陽司のお母さんは、元気が取り柄のような人で、貫禄もあって、悪いことは悪いと叱ってくれる。
強いお母さんだ。

だけど、今のお母さんは眼が虚ろ、貫禄もなければ覇気もない。少し窶れているようにも感じた。

僕は何だか申し訳ない気持ちになってしまった。

多分誰も僕を責めない。
だからこそ余計に辛い。

陽司ごめん…。お母さんごめんなさい…。