「サク、出られるか?」

「おう、町行くのか?」


朝ご飯を食べ終わったハルに声を掛けた。出てきて早々にサクが放った言葉に、ソウは嗚呼、と頷く。町に行く時にサクを連れて行くのは、暗黙の了解のようなものになっていた。


ハルは、町が苦手なのだ。


当たり前といえば当たり前ではあるが、知らずに一度連れて行ってしまったとき、ゲンが暴れそうになったのをサクとテルに抑えてもらってすぐ家に帰ったのは、半年くらい前の話である。本当はテルでも構わないのだが、そこは年功序列に収まったわけだ。また、テルはハルと一緒にいることが多いから、というのもある。


支度をしてくる、とリビングを出て行ったサクに、ソウも片付けを終わらせようと茶碗を洗い始める。それが終わると、ソウは財布と買い物リストを持つ。戸締りを確認していれば、支度を終えたサクが二階から降りてきた。


「ソウ、準備できたぞー」

「お、了解。鍵持って外出てろ、すぐ行くから」


おー、と返事をしたサクが外に出て行く音がする。窓の鍵が全部閉まり火の点いていないことを確認すると、ソウも外へ出る。サクが鍵を閉めると、二人は町へ出るために歩き出した。

「ソウー、今日は何買うんだ?」

「ま、いつもと同じようなもんだな。今日も重くなんぞ?」

「いつものことじゃん」


サクの言葉にソウもそうだな、と同意して小さく笑う。久しぶりの外出は約二週間振り。とは言え、いつもそんなペースだからあまり変わらない。一つ大変なのは、荷物が多いことである。しかしそれも慣れたようなもので、ソウとサクは色々と心得ていた。


町までは一時間ぐらいかかる。ハルを拾った時はこの道を二往復したものだ。それをふと思い出したソウはふっと笑みを零す。不思議そうな視線を向けてくるサクに、ソウはなんでもないと首を振る。


「歩き慣れたもんだよなーこの道も」

「一年経つからな。去年の今頃じゃないか?」

「あー……だな、あの頃は色々大変だったなー」


確かに大変だった。今とは比べ物にならないくらいである。ソウはまた一つ頷き、それから前に視線を向ける。ここまで来れば、町までは後半分といったところ。