ガチャン、と激しい音がする。その音に思い至ったソウは立ち上がって階段を駆け上がる。部屋の前に立つと、ばたん、と勢いよくドアを開ける。


「……メイ?」

「っ、……ソウちゃん……」


ベッドの隅に蹲っているのはメイ。涙声の彼女の傍に近寄り、ソウはその小さな、震える身体を抱き締める。縋るようにソウの背中に手を回し、メイはぐずぐずと泣き始める。


何があったのか、部屋の状況を見たソウは予想がついていた。散らかった洋服と、倒れかけている机。明らかに荒れている部屋は、大方ゲンがやったのだろうと察する。


きっと今は、部屋でサクとテル辺りが抑えているのだろう。ナノが出てくると自死しかねないし、アオは怖くて引きこもっていると思われる。恐らくハルもアオと同じような状況。意識を飛ばすという方法がなくもないが、それだとゲンに乗っ取られかねないし、つまりはメイが出てくるしかなくなったのだろう、だが。


「っふう……ソウ、ちゃ、っ……」

「落ち着け、落ち着けメイ。大丈夫だから」


過呼吸に陥りかけている彼女の背中をさする。更に強く抱きついてきたメイの頭を撫でてやる。


だが、不安定なのはメイも一緒だ。他に出てこられる奴がいなかったから出ざるを得なかっただけの話。そうでなければ、メイだって逃げたかったに違いあるまい。彼女もまた、今は違えど自殺未遂の過去を持つ。


しばらくの間、ソウとメイはそのまま動かないでいた。と、不意にメイが「うん……」と頷き、すうっと意識を手放す。それを見たソウは苦しげな表情でその頬をさらっと撫で、ベッドを整えてからそこに寝かせる。それから徐に立ち上がると、そうは散らかった部屋を片付け始める。


最近、ゲンの暴れることが多くなっていた。どうしたのかは分からない、ただ、とにかく暴れている。それをサクとテルが抑え、ハルとアオが部屋に篭り、ナノを出さないためにメイが出てくる。それが日常化されつつあって、ソウもハルたちも疲れ果てていた。


このところ、ソウもハルもしっかり眠れていない。そのせいでハルが過去の記憶を思い出し、それがゲンの原動力となっている。そしてまたハルが眠れなくなり、という悪循環に陥っているのは明白。しかしソウはどうすることも出来ないままでいた。