「何でもありません……」
首を振って、先輩から目を逸らしながら言う。
だけど、先輩がそれで納得するわけがなくて。
「何でもないわけないだろ?そんな泣いて」
「本当に何も…」
「俺に言えないこと?」
言えない。
絶対に先輩には、知られたくない。
「言いたくありません」
変なの。
前は先生にだけは絶対知られたくなかったのに、今はその対象が先輩になった。
先輩は少し間を置いて「わかった」と言うと、先生を呼んだ。
「陽平、悪い。こいつ頼むわ」
「了解」
先輩は立ち上がると、私に背を向けて歩き出した。
「先輩!」
呼び止めるも、足を止めてくれない。
先輩、怒っちゃったかな……
心配してくれたのに、話さないから気を悪くさせちゃった?
だけど、あんなこと知られたくないんだもん。