「ミヤ……」
いつの間にか私を見ていた先輩は、ハッとしたのか目を見開くと切なそうな声で私を呼ぶ。
そして一歩、また一歩と歩み寄ると、私の右頬を掌で包んだ。
「馬鹿。泣くなよ」
「な、泣いてなんかいません……」
「嘘つき。泣いてんじゃん」
瞬きと同時に溢れた一粒の涙を先輩が指で拭う。
ふ、と笑った先輩の表情が、苦しさと儚さを兼ね添えていて。
その高校生らしからぬ色気に、ゾクリと背筋が震えた。
お母さんの言葉が蘇る。
“そんなの簡単よ。雅はもう少し、自分の気持ちに正直になりなさい。どうも先輩が絡むと、意固地になっちゃうみたいだから”
私の気持ち…
本当の気持ち……?
見つめ合う、先輩と私。
時間が止まったようだった。