もう先輩は放っておくことにした。
だって私の好きな人は田中先生であって、先輩ではないんだから。
どうせ先輩の暇潰しの対象が私から別の人に変わっただけよ。
でも、この胸のモヤモヤは簡単に消えてはくれなくて、正直参ってる。
「そんなの簡単よ。雅はもう少し、自分の気持ちに正直になりなさい。どうも先輩が絡むと、意固地になっちゃうみたいだから」
「別に意固地になんかなってないし」
「ほら!そういう所よ?正直になれば自ずと自分の気持ちが見えてくるはず」
お母さんは珈琲カップを置くと、「さて、夕飯の支度しなくちゃ」と鼻歌を歌いながらキッチンに入っていった。
正直になれば自ずと自分の気持ちが見えてくる?
そうすればこのモヤモヤが解消されるの?
「はぁ……」
このモヤモヤとは、長い付き合いになりそうだな。
私はため息を吐くと、頭の中にいる先輩を洗い流すかのようにアイスココアを一気飲みした。

