俺様主人は時に甘い


『お父さんも?』



先生の質問に、一瞬戸惑う。


お父さんの死から何年も経ってるけど、未だに父親関連の話題は苦手だ。


早くに亡くなったって言うと、皆が皆“ヤバイ”って顔をする。


腫れ物を触るみたいに優しくなったり。


“雅ちゃんは可哀想な子ね”なんて、善人者振ったり。


そういうのが嫌だから、なるべくならお父さんの話はしたくない。


けど、今回はそうはいかなそうだ。


どうせ個人票見たらわかることだし、先生には隠すことじゃない。




「父は…いません。数年前に他界しましたから」


『あ…そうか……ごめん』



案の定、気まずそうに口籠る先生。


電話だから先生の表情は見えないけど、この人も他と同じ。


ヤバイって顔、してるんだろうな……



それで空気が気まずくなって、この後すぐに電話を切ろうとするんでしょ?


それが、父親の話題になった時のいつもの締めのパターン。


もう慣れっこで傷付かないから、気まずくならなくていいから、早く電話切ってよ。