ポケットに入っていた携帯で、学校に電話を掛ける。
事務員に田中先生を呼び出してもらうと、受話口からカノンの保留音が流れた。
そういえば、田中先生ってどんな顔してたっけ?
昨日のホームルームを必死に思い出しても、なかなか思い出せない。
若くて、細身で、真っ黒の短髪で。
何となく、爽やかだったっていうイメージはある。
んー…あとは、社会担当ってことぐらいは覚えてるけど。
どんな目をしていて、唇は厚いのか薄いのか、鼻筋は通っているのか。
声は低いのか高いのか。
全く思い出せない。
暫くして、保留音が切れると『もしもし』と、低くて不機嫌そうな声が聞こえた。
「もしもし、一年二組の落合雅です」
『ああ……』
ああって、それだけ?
“おはよう”とか、“どうした?”とか一言ないの?
「体調悪いので、今日は学校休もうと思うんですが」
『…体調悪い?』
「39度の熱が出てしまって」

