俺様主人は時に甘い


寂しくないって言ったら嘘になる。


だけど、お母さんが頑張ってくれてるのをわかってるから我が儘なんて言えない。



「風邪薬あったかな」



ふらつく体をなんとか支えながら、背伸びをして棚の一番上にある救急箱に手を伸ばした。その時。



「きゃあっ!」



ぐにゃりと視界が歪むと、体勢を崩してその場に倒れ込んだ。


救急箱が落ちて、中の物が全て床に散乱する。



「イタタタタ…」



もう…ホント最悪だ……



目眩はするし。


頭も身体も凄く痛いし。


吐き気だってある。



薬は取れないし、頭に降ってくるし。


倒れた拍子に手首の筋を痛めるし。



お母さんはいない。


誰もいなくて、家の空気が冷たい。




薄っすらと滲む涙を服の袖で拭うと、床に散らばった救急箱の中の物を拾う。



もう諦めよう…


こんなフラフラしてるのに、慣れない電車に乗って学校まで辿り着けない。


辿り着けたとしても、とてもじゃないけど椅子に座っていられる状態じゃない。